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研究の背景・目的

デモクラシーにおいては、制度構築および政策形成には、政治システムの構成員である市民のニーズを反映させる事が必須です。しかし、漠然と市民のニーズを世論調査で聞いただけでは、意味ある形で市民のニーズを反映する制度や政策を作ることはできません。それでは、どのようにすれば市民のニーズを捉えることができるのでしょうか。本研究プロジェクトでは、政治理論と実証政治学の知見を融合して編み出した新たな調査手法を用いて、「真の民意」に迫ることを目指します。

研究の方法

そこで本研究では、二つの方法を用いて市民のニーズを探ります。第一に、日本が直面する課題について熟慮することなく意見を表明してもらう普通の調査、および、熟慮したうえで意見を表明してもらう「熟慮型」の調査を、CASI形式の世論調査(Computer Assisted Self-administered Interview:無作為抽出した対象者にタブレットを用いて行う世論調査)として行います。第二に、少人数のグループで討議したうえで回答してもらう、「熟議型」の世論調査(ミニ・パブリックス(mini-publics)の一形態)を実施します。そして、普通の調査で表明される意見と熟慮したうえで表明される意見、熟議したうえで表明される意見がどのように異なるのかを比較検討します。さらに、熟慮型の世論調査の結果と熟議型の世論調査の結果を相互作用させた場合、人々の意見がどのように変容するかを探究します。

期待される成果と意義

このように、実証政治学の分野で方法論的に発展したCASI形式の熟慮型世論調査と、政治哲学の分野で理論的発展を見せた熟議型世論調査とを組み合わせた、「市民熟慮/熟議反映型世論調査」を行うことで、日本が直面する課題に関する「真の民意」を浮かび上がらせることができます。これにより、市民のニーズを的確に反映させた形で制度構築や政策形成を行うことが可能になると期待しています。

研究代表者 早稲田大学政治経済学術院 教授 田中愛治

研究代表者
早稲田大学政治経済学術院 教授
田中愛治